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翻訳版
未来を拓く化学
分子設計、超分子、ナノテクノロジー、そしてその先にあるもの
Chemistry at the Beginning of the Third Millennium

[コードNo.02NTS042]

■体裁/ B5判 上製 352頁
■発行/ 2001年12月15日
(株)エヌ・ティー・エス
■定価/ 30,580円(税込価格)


原書
『Chemistry at the Beginning of the Third Millennium:Molecular Design, Supramolecules,
Nanotechnology and Beyond』(2000年) Springer Verlag(独)
1999年10月開催Coimbra大学グループドイツ・イタリア会講演録

原書著者
Luigi Fabbrizzi/Antonio Poggi

ヨーロッパ37大学の連携・Coimbraグループによる学術会議(1999年開催)の講義録を邦訳。
今後1000年間における化学の方向性を「分子」をキーワードに論じる。これからの研究・開発のヒントとトピックスを豊富に揃えた書籍。


翻訳にあたって

 研究テーマの提案から成果を出すまでを3〜5年間でやってのけることが求められる時代にあって,本書は1000年のタイムスパンでこれからの化学を考えてみよう, という壮大な構想に立って編集されている。
 現代のアカデミーの原点としての伝統を自負するヨーロッパの37大学がヨーロッパ共同体EUの大学版として連携したCoimbraグループは,1999年10月7〜10日, イタリアのパビアにて,来る千年期(第3ミレニアム)を視野に入れた化学分野における研究・開発に関する重要なテーマを取り上げ, 「Chemistry at the Beginning of the Third Millennium」と題して第5回会議を開催した。 本書はその講義録をもとに上梓されたものである。
 世界史を眺めてみると,第1ミレニアムはローマに皇帝制度が成立した頃から神聖ローマ帝国が始まる頃まで,わが国についてみると, 奴国の金印が届いた頃から平将門が殺された頃までである。 その間に化学がいかに大きな進歩を遂げたかについては,正倉院の収蔵物を見れば十分に納得できる。 中国で火薬と磁針が相次いで発明されたのは第2ミレニアムの初めであるが,それからつい先年までの1000年間に化学が遂げた掛け値なしに驚くべき進歩については, 読者諸氏が身をもってよく知るところである。 化学に限らず世界の変化について1000年単位で思いをはせるのも,楽しく,かつ有意義なリフレッシュであろう。
 化学は物質の科学であり,物質の最小単位は分子である。 よって,材料の極限は分子であり,第3ミレニアムの化学の行く手は,極言すればいかに多種多様でワイルドな分子デバイスを創製するかにある。 本書は,分子を材料として利用する際に,そのシーズとなり得る分子や,シーズとしての兆しをはらむだけでまだ受粉もしていないやに思われる分子について, さまざまな視点と側面を提示している。 各章の著者はいずれもそれぞれの分野のフロントランナーであると同時に,ヨーロッパの伝統的な大学で多くの研究者・学生を率いる, 教授(Professor)あるいは教授・博士(Professor Dr.)として研究者の育成にも尽力している。 本書が読者諸氏にとって,いささかなりとも有益な知識の源泉となり,また今後の研究・開発の一助になるとともに,著述に表れる著者それぞれの個性や人柄の一端をくみ取って, 国際会議等で接触する際の参考になれば,訳者としてはうれしい限りである。
 原本には,講義に用いたディスプレイをハードコピー化する際に生じたと思われる図の色落ちや線落ちが散見される。 単語のつながりが腑に落ちない文章もわずかながらあった。翻訳にあたって補足・修正に極力努めたつもりであるが,まだ不十分な点が残っているであろう。 読者の許しを乞いたい。
                                                           2001年12月  廣瀬 千秋
                                                                     遠藤 剛


序言

 本書は,1999年10月7日から10日にかけてイタリアのPaviaで開催された,「Coimbraグループ」のメンバーとなっているドイツおよびイタリアの大学の研究者による会議 「第3ミレニアムを化学はどう拓くか(Chemistry at the Beginning of the Third Millennium)」の会議録である。 Coimbraグループは,大学における研究と教育の動機づけを促進するとともに大学制度を前進・発展させるためのガイドラインを提示することを目的として, 歴史と伝統を持つヨーロッパの総合大学(universities)をメンバーとして1987年に結成された。 Coimbraグループに所属するドイツおよびイタリアの大学は,毎年一つの科学的なテーマを選んで会議を開いてきた。 上記Pavia会議は,Bologna(1995年),Jena(1996年),Siena(1997年),Heidelberg(1998年)に続く第5回会議である。 これらの会議では,人文科学あるいは自然科学におけるトピックスについて,グループを構成する六つの大学の優れた科学者による講義が行われる。 実行委員会はPavia会議のテーマとして「化学」を選択した。 会議では化学の先端を行く研究分野である材料科学,超伝導物質,超分子化学,生物無機化学,フラーレンの化学,液晶,光誘起電子移動などが発表された。
 本書のタイトルと会議の名前は,会議から3カ月足らずのうちに新しい千年紀を迎えるというタイミングと提示されたテーマの魅力あふれる多様性に由来している。 200年を少し超えるだけという化学の歴史を考えても,また実験を主体とする学問上の性格から現時点の状況を重視しがちな化学者にとってはなおさら, 1000年先を見越そうとする本書のタイトルに違和感を抱く向きがあるかもしれない。 確かに化学における研究は,だれも予期しなかった展開を見せたり思いもよらない障害にぶつかったりするものであるから, 1000年先を考えることなど,とんでもないことかもしれない。 タイトルのキーワードも地道に10年程度にするべきかもしれない。 しかし,化学が「物質を巧みに使いこなす」という人類の活動の一端である以上,人類が地球上にある限り,10年はおろか100年を越えて, 願わくば1000年をも越えて進展を続けるものであると編者は信じる。 この進展を支えるのは自らの研究の意義と意味に対する研究者の信念と情熱である。 Pavia会議には次代の化学を担う若い研究者が多数参加して,現代化学の最前線に触れるとともに指導的な化学者と気軽に交流することができた。 このことは編者らにとってこの上ない喜びである。 彼ら若手研究者を会議に招待することを可能にしたPavia大学当局およびCARIPLO財団の温かい支援に感謝の意を表する。
                                               2000年2月,Paviaにて記す  Luigi Fabbrizzi
                                                                  Antonio Poggi


翻訳者

廣瀬 千秋
(Chiaki Hirose)東京工業大学 名誉教授1940年生まれ。1966年東京大学大学院化学系研究科化学専攻博士課程中退。
東京工業大学資源化学研究所助手、同助教授、同教授を経て2001年3月をもって、東京工業大学名誉教授の称号を授与されて停年退官。
専門は物理化学(分子分光学、レーザー分光)。


監訳者

遠藤 剛
(Takeshi Endo)山形大学 工学部 教授/東京工業大学 名誉教授
1939年生まれ。1969年東京工業大学大学院理工学研究科化学専攻博士課程修了。
東京工業大学資源化学研究所助手、助教授、教授を経て1991年より同所長を9年間務める。
2000年東京工業大学名誉教授の称号を授与されるとともに、山形大学工学部機能高分子工学科教授に就任、現在に至る。
月刊「未来材料」編集委員長。


原書編者

Prof. Luigi Fabbrizzi
Prof. Antonio Poggi

Department of General Chemistry、University of Pavia


構成と内容

第1章 ボトムアップ方式によるナノテクノロジーへのアプローチ
    −機能分子で構築した超分子
     Vincenzo Balzani , Paola Ceroni (Universita di Bologna)
 1. はじめに
 2. 分子ワイヤ(分子電線)
 3. 分子スイッチ
 4. 分子アンテナ
 5. 分子プラグソケットおよび分岐システム
 6. 論理演算用ゲート素子
 7. 分子メモリー
 8. 光駆動ピストン
 9. 分子そろばん
 10. カテナンリングの回転運動∴
 11. デンドリマー箱の光開閉
 12. おわりに

第2章 有機金属化学と理論計算に立脚した触媒設計
    −ルテニウムを用いた新規の超高効率な単一サイト均一ROMP触媒
     Martin A.O. Volland, S.Michael Hansen , Peter Hofmann
     (Ruprecht-Karls-Universitat Heidelberg)
 1. はじめに
 2. Grubbsタイプカルベン錯体によるオレフィンメタセシスの機構
  2.1. 実験と理論計算
  2.2. アニオニックな配位子の解離とホスフィンの解離
 3. cis-ホスフィンの立体化学を利用した新規Grubbsタイプメタセシス触媒
  3.1. カルベン前駆体の合成
  3.2. 有望なRuヒドリド前駆体の探索
  3.3. cis-Ruカルベン錯体の合成と構造
  3.4. cis-ホスフィン配位子およびtrans-ホスフィン配位子を持つ
     Ru-カルベン錯体の電子構造:モデル化合物の量子化学計算
 4. Ru-カルベンカチオン錯体
  4.1. 新規のRuU-カルベンカチオン錯体の合成と構造
  4.2. Ru-カルベンカチオン錯体の触媒活性
  4.3. Ru-カルベンカチオン錯体のモデル化合物に対する量子化学計算
 5. コメントおよび結論

第3章 強制的配位構造
    −前組織化、触媒作用、その先にあるもの
     Peter Comba (Universitat Heidelberg)
 1. はじめに
 2. 配位子場および還元電位のチューニング
 3. Cu(T/U)システムを使った可逆的な酸素結合,酸素活性化,酸化の触媒

第4章 デザインされた遷移金属イオン錯体が示す超分子機能
     Paolo Scrimin (Universita di Padova), 
     Paolo Tecilla (Universita di Trieste),
     Umberto Tonellato (Universita di Padova)
 1. はじめに
 2. レセプターシステムと凝集体システム
 3. 超分子システムとその機能のもとになる遷移金属配位子錯体形成
 4. 反応性と触媒活性
 5. 転座(トランスロケーション)
 6. 化学センサ
 7. おわりに

第5章 光誘起電子移動
    −有機合成における展望
     Angelo Albini, Maurizio Fagnoni, Mariella Mella
     (University of Pavia)
 1. 光化学反応
  1.1. 励起状態の化学反応性
  1.2. 励起状態における酸化還元プロセス
 2. 有機化学における酸化還元過程と無機化学における酸化還元過程
 3. 励起された有機分子が関与する酸化還元過程
 4. 光化学によるラジカルイオンの生成
 5. 光誘起電子移動を介した有機合成
  5.1. 方法の特徴
  5.2. 応用
 6. おわりに

第6章 大環状[N42−および鎖状[N2O22−]シッフ塩基配位子による
    「生体からやってきた」金属錯体−ポルフィリンとサリチル
    アルジミンを結ぶ関係
     Ernst-G.J_ger (Friedrich-Schiller-Universitat Jena)
 1. 生物触媒の活性サイトである大環状金属錯体―第3ミレニアムにおける化学への挑戦
 2. 生体モデルでの知見をもとにデザインされた合成錯体
  2.1. ポルフィリンとサリチルアルジミン
  2.2. 大環状イミノエナミンの錯体と鎖状オキソエナミンの錯体
 3. 触媒実験の結果
  3.1. ジオキシゲンの活性化
  3.2. エレクトロ触媒反応による二酸化炭素の還元的カップリング
 4. 配位不飽和金属による配位子効果のプローブ
  4.1. 平面形ニッケル錯体
  4.2. 5配位有機コバルト錯体l
 5. へミン類似大環状配位子の環境下に置かれた鉄(V)の化学
  5.1. 5配位中性錯体における不均一配位子交換
  5.2. “構造の模倣”
  5.3. アキシアル配位子の分光化学:CTバンドのシリーズ
  5.4. 八面体誘導体のアキシアル配位子の置換―“プッシュプル”効果の定量化
 6. 鉄錯体の構造および磁性
  6.1. 分子構造とスピン状態
  6.2. 分子間相互作用と共働性

第7章 ジアステレオ面選択特性に対する温度および溶媒の影響
     Gianfranco Cainelli, Daria Giacomini, Paola Galletti, 
     Paolo Orioli
     (Universita degli Studi di Bologna)

第8章 材料の生物学的機能
     Rolando Barbucci, Stefania Lamponi, Agnese Magnani
     (Universita di Siena)
 1. 生体適合性へのアプローチ:一般的考察
 2. “生物学的機能”の概念
 3. 材料の生物学的機能を改善するいくつかのアプローチ
  3.1. 表面の改質
  3.2. 化学からのチャレンジ
 4. 表面分析
 5. 表面修飾の空間的コントロール:マイクロパターン化および
   ナノパターン化した表面による細胞特性への作用
 6. 生物的相互作用のデザイン:表面の精密加工

第9章 化学者から見た酸化物超伝導体
     Giorgio Spinolo, Paolo Ghigna, Umberto Anselmi Tamburini,
     Giorgio Flor (Universita di Pavia)
 1. はじめに
 2. 構造と物性の相関
 3. 合成

第10章 [NiU(cyclam)]2+フラグメントを利用した分子スイッチ
             +フラグメントを利用した分子スイッチ
     Valeria Amendola , Luigi Fabbrizzi, Maurizio Licchelli,  
     Piersandro Pallavicini, Donata Sacchi (Universita di Pavia)
 1. 分子スイッチのデザイン
 2. 多機能コントロールユニット:[NiU(cyclam)]2++
 3. 蛍光の酸化還元スイッチ
 4. 蛍光性の分子温度計
 5. [NiU(cyclam)]2++および[NiV(cyclam)]3++を用いた
   陰イオンのトランスロケーション(転座)
 6. おわりに

第11章 有機単分子膜のタンパク質吸着に対する耐性を左右する
    膜分子の立体配座
     M. Grunze, A.Pertsin (Universitat Heidelberg)
 1. はじめに
 2. 実験的研究
 3. タンパクの吸着
 4. 計算による研究
 5. タンパクの吸着挙動を説明するモデル
 6. SAMの構造に対する外部電場の影響
 7. おわりに

第12章 メタロフラーレン分子の電気化学的側面と構造的側面
     Piero Zanello (Universita di Siena)
 1. エキソヘドラルメタロフラーレン
 2. エンドヘドラルメタロフラーレン

第13章 新規ポリオキソメタレートと配位ポリマー
     Christian Robl (Friedrich-Schiller-Universitat Jena)
 1. ポリオキソメタレート
  1.1. はじめに
  1.2. [Te6MO12O60]12−と[Se2MoO8]2n−
  1.3. [XYnMO6O21+4n(OH)6−2n]8−(X=SeW,Y=SW,SeY)および関連物質
 2. 配位ポリマー
  2.1. はじめに
  2.2. 一次元的に無限につながった配位ポリマー
  2.3. 二次元的に無限につながった配位ポリマー
  2.4. 三次元的に無限につながった配位ポリマー

第14章 代謝プロセスのキネティックス-モデリングによる解釈
     S.Bastianoni, C.Bonechi, A.Gastaldelli, S. Martini, C. Rossi
     (Universita di Siena)
 1. はじめに
 2. 方法
  2.1. スペクトル測定
  2.2. バクテリアおよび酵母の培養
  2.3. 数学的解析
  2.4. 生体システムにおけるコンパートメント形(compartmental)モデル
  2.5. エネルギーシステムのダイヤグラム
 3. 代謝のモデル化
  3.1. K.planticolaによるキシロースの分解
  3.2. K.planticonaによるグルコースおよびキシロースの同時分解
  3.3. 酵母によるグルコースの代謝
 4. おわりに

第15章 モデル液晶のコンピュータシミュレーションと分子設計
     Claudio Zannoni (Universita di Bologna)
 1. メソゲン分子のモデル
 2. Gay-Berneポテンシャル
  2.1. 双極子システム
  2.2. ディスク形システム
 3. おわりに

●索引



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