DNAチップ活用テクノロジーと応用
DNA Chips Technologies and Applications
[コードNo.2006T523]

■監修/ 久原哲(九州大学大学院 農学研究院 教授)
■体裁/ B5判 214ページ
■発行/ 2006年 9月 (株)シーエムシー出版
■定価/ 68,250円(税込価格)

活用レベルまで達したDNAチップ分野の最新技術を詳述!
I.チップの新しい技術、II.チップの新しい実験法、III.発現解析と機能解析の3編から構成!
半導体や機器メーカーなどの異業種参入が盛んなDNAチップに注目!

※ 本書籍はご試読頂けません ※

はじめに
 20世紀の最後の10年間の圧倒的ゲノム全塩基配列解読プロジェクトの進展により、21世紀におけるポストゲノム科学の大きな研究開発分野としてOMICS(Transcriptomics, Proteomics, Metabolomics等、各層における網羅的解析の総称)研究が始動し、生物学が新しい局面を迎えている。生物機能を高度に利用するためには、遺伝子・タンパク質・代謝産物の網羅的同定とともに、それらの構成する機能ネットワーク構造を理解することが不可欠である。生命の青写真は遺伝子ではなく、ネットワーク構造であるとすら言われている。
 これらの新しい概念の最初のステップがトランスクリプトミクスであり解析手段としてDNAチップが実用化されたのは周知のことである。DNAチップが最初に使われたのは1995年の出芽酵母であり、当時のチップはガラスの基板の上にcDNAを貼り付けたものであり、研究室での自作が主流であった。しかしアフィメトリックス社がオリゴプローブを基盤上で合成させる手法を開発し、一気にオリゴプローブが主流を占めるようになった。また、ゲノム配列の決定にあわせてチップのコンテンツも多様になり、現在ではゲノム配列が明らかになった主要な生物のチップがカタログに載っている時代になっている。同時に研究対象も遺伝子領域からタイリングアレイ等のゲノム全体へとより広い領域をカバーしつつあり、さらにCHIP on Chip解析等の解析を通して複製過程の解析までもが対象となるような拡張が行われている。
 さらにハード面でも、チップの基盤においても、ガラス基盤、ダイアモンド基盤からシリコン基盤、ビーズ等の新しい基盤が採用され、基盤の形も平面からパイル型あるいは繊維型チップ等立体基盤へと拡張されている。
 一方解析分野では、初期に行われたモデル動物での発現解析からヒトへの応用が盛んに行われ、多くの重要な成果を挙げている。特に医療への応用はチップの近年、患者個人の体質や病態・薬剤応答性をもとに薬の種類や量を決定するなどの患者個人に適した医療(オーダーメイド医療)の実現、あるいは病気の早期発見や病態診断に用いるための高感度の疾患特異的バイオマーカー探索研究が進んでおり、信頼性の高い臨床診断の実現が期待されている。
 最後にこれらの研究あるいは応用の基礎となる解析技術も大幅に進んでいる。従来から指摘されてきたデータの誤差については、誤差の修正法が開発されてきている。解析手法も広範囲の分野の研究者が開発に着手して、チップデータの研究分野にあった解析プログラムが提供されている。
 本書では、これら最近の進展をチップ開発の企業、新しい実験手法、解析の実際としてモデル生物での発現解析からヒトでの臨床応用までを例をあげながら解説している。最後に全ての解析の基本となる解析技術の基礎の技術的解説を行っている。
2006年9月 九州大学大学院 農学研究院 教授 久原哲

執筆者一覧
久原哲九州大学大学院 農学研究院 システム生命科学府 遺伝子資源工学部門 遺伝子制御学講座 バイオアーキテクチャーセンター 教授
梶江慎一アフィメトリクス・ジャパン(株)
浅岡広彰イルミナ(株) 営業部 部長
平山幸一東洋鋼鈑(株) 技術開発・環境本部 技術研究所 開発研究部
信正均東レ(株) 新事業開発部門 DNAチップグループ グループリーダー
秋田隆三菱レイヨン(株) 新事業企画室 ゲノムグループ 担当部長
大島拓奈良先端科学技術大学院大学 助手
白髭克彦東京工業大学 バイオ研究基盤支援総合センター 助教授
百瀬義雄東京大学大学院 医学系研究科クリニカルバイオインフォマティクス研究ユニット
中原康雄東京大学大学院 医学系研究科神経内科
辻省次東京大学医学部付属病院 神経内科 科長
漆原秀子筑波大学 大学院生命環境科学研究科 教授
岩橋均(独)産業技術総合研究所 ヒューマンストレスシグナル研究センター 副研究センター長
石田直理雄(独)産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門 生物時計研究グループ グループ長、 筑波大連携大学院 生命環境科学 教授
源利文(独)産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門 生物時計研究グループ ポスドク研究員
古屋茂樹九州大学 バイオアーキテクチャーセンター 教授
吉田一之宇都宮大学 農学部生物生産科学科
平林義雄(独)理化学研究所 脳科学総合研究センター CREST
下地尚(財)癌研究会 ゲノムセンター チームリーダー
野田哲生(財)癌研究会 癌研究所 所長/ゲノムセンター長
斎藤博久国立成育医療センター研究所 免疫アレルギー研究部 部長
黒川敦彦(株)サインポスト 代表取締役CEO
山崎義光大阪大学医学部付属病院 病院教授
中神啓徳大阪大学医学系研究科 遺伝子治療学 助手
森下竜一大阪大学医学系研究科 臨床遺伝子治療学 教授
本多政夫金沢大学大学院 医学研究科 感染症病態学助教授、 消化器内科
山下太郎金沢大学大学院 医学研究科 消化器内科
上田晃之金沢大学大学院 医学研究科 消化器内科
川口和紀金沢大学大学院 医学研究科 消化器内科
西野隆平金沢大学大学院 医学研究科 消化器内科
鷹取元金沢大学大学院 医学研究科 消化器内科
皆川宏貴NEC基礎・環境研
金子周一金沢大学大学院 医学研究科 消化器内科教授
小西智一秋田県立大学 生物資源科学部 准教授
中村由紀子愛媛女子短期大学 生命科学研究所 かずさDNA研究所 植物ゲノムバイテク研究室
真保陽子奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科・情報生命学専攻
矢野美弦千葉大学大学院薬学研究科 遺伝子資源応用研究室、 理化学研究所 植物科学研究センター
モハマド・アルタフル・アミン奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科・情報生命学専攻
黒川顕奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科・情報生命学専攻
阿部貴志国立遺伝学研究所 生命情報 DDBJ研究センター
木ノ内誠山形大学 工学部 応用生命システム工学科
斉藤和季千葉大学大学院薬学研究科 遺伝子資源応用研究室、理化学研究所 植物科学研究センター
池村淑道長浜バイオ大学
金谷重彦奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科・情報生命学専攻
井元清哉東京大学 医科学研究所 ヒトゲノム解析センター DNA情報解析分野 助手

構成および内容
はじめに(久原哲)
I編チップの新しい技術
第1章ゲノムタイリングアレイ(梶江慎一)
1Gene Chipの製造技術とプローブアレイの高集積度化
2ゲノムタイリングアレイによって実現される新しいアプリケーション
3ゲノムタイリングアレイのデザイン
4タイリングアレイのデータ解析
5全ゲノムタイリングアレイセット
6Human Promoter 1.0R Array
7Chromosome 21/22 1.0 Array Set
8ENCODE01 1.0 Array
9サンプル調製プロトコール
第2章ビーズアレイ(浅岡広彰)
1はじめに
2ビーズアレイプラットフォーム技術の概略
2.1アレイフォーマット
3SNPジェノタイピング解析の概要
3.1Golden GateTM Assay(Custom Design SNP解析に最適)
3.2Whole Genome Genotyping(infiniumTM) Assay(網羅的SNP解析に最適)
4遺伝子発現プロファイリング解析の概要
4.1In Vitro Transcription(IVT) Assay(網羅的な遺伝子発現解析に最適)
4.2DNA-Mediated Annealing, Selection, extension, and Ligation(DASL) Assay(Custom Design遺伝子発現解析に最適)
5アプリケーション紹介
5.1Universal Bead Arraysを用いたフォルマリン固定パラフィン包埋組織の遺伝子発現プロファイリング
6まとめ
7おわりに
第3章検査用シリコンミニマイクロアレイ (平山幸一)
1はじめに
2開発の経緯
3ジーンシリコンについて
4ジーンシリコンの構成および特徴
5ジーンシリコンの作成方法
6スポット溶液の検討
7遺伝子解析用基板としての評価
8SNPの検出
9おわりに
第4章柱状構造高感度DNAチップ (信正均)
1はじめに
2高感度チップ技術の特徴
2.1チップ形状・材質による検出スポット形状の安定化とノイズ低減
2.2チップに固定するDNA(プローブDNA)の密度制御
2.3ターゲットDNAとの反応性向上
3柱状構造DNAチップの性能評価
4今後の展開
5おわりに
第5章繊維型DNAチップ(秋田隆)
1はじめに
2ハイブリタイゼーション
2.1ハイブリタイゼーションに関係するDNAの形態変化
2.2効率的なハイブリタイゼーション
2.3ハイブリタイゼーションにおける諸問題
2.3.1部分ミスマッチ塩基対形成
2.3.2分子間静電相互作用
2.3.3ターゲット核酸の高次構造
2.3.4一塩基多型検出
3フォーカストアレイ
4ジェノパールの製造方法
5ジェノパールの使用方法
6ジェノパールの基本性能
6.1再現性
6.2感度
6.3定量PCRとの相関
7ジェノパールの応用例
7.1マイクロRNA解析への応用
7.2腸内フローラ解析への応用
7.3化学物質バイオアッセイへの応用
7.4環境ホルモン検査への応用
7.5ゲノム多型解析への応用
8一塩基多型検出法
9DNAチップの今後の課題
II編チップの新しい実験法
第1章バクテリアのタイリングアレイ解析(大島拓)
1はじめに
2タイリングアレイ
3大腸菌、枯草菌の遺伝子間高密度化タイリングアレイ(intergenic tiling array)
4大腸菌および枯草菌タイリングアレイを用いた転写解析
4.1標識cDNA断片の合成
4.2ハイブリダイゼーションシグナルの解析
4.3発現量データの解析(ゲノムDNAハイブリダイゼーションデータによるcDNAハイブリダイゼーションデータの補正)
4.4タイリングアレイによる転写データを用いた転写開始点の解析
5低分子RNAおよび低分子量たんぱく質をコードする遺伝子領域の推定
5.1ChIP-chip解析
5.2ChAP-chip法
5.3RNA polymeraseの分布
6おわりに
第2章ChIP-on-chip法(白髭克彦)
1はじめに
2背景と操作の概略
3ChIP-chipによる染色体動態の解析
4おわりに
第3章チップを使ったSNP解析(百瀬義雄、中原康雄、辻省次)
1SNPとは
2チップによるSNPタイピング
3チップを使ったSNP解析の実際
3.1メンデル遺伝性疾患への応用
3.2多因子疾患への応用
3.3その他
III編発現解析と機能解析
第1章モデル動物
1細胞性粘菌トランスクリプトームのアレイ解析(漆原秀子)
1.1細胞性粘菌のゲノミクス
1.1.1細胞性粘菌とその生活環
1.1.2細胞性粘菌のゲノム解析
1.1.3細胞性粘菌でのアレイ解析
1.2cDNAアレイとその利用
1.2.1発生過程でのトランスクリプトーム解析
1.2.2脱分化過程の解析
1.2.3その他の解析
1.3オリゴアレイを用いた解析
1.4おわりに
2酵母 環境化学物質影響評価への発現解析の利用(岩橋均)
2.1DNAマイクロアレイを用いた化学物質の毒性評価
2.2酵母の利点と欠点
2.3暴露実験条件の設定
2.4誘導・抑制遺伝子の選択
2.5誘導・抑制遺伝子の機能分類
2.6誘導・抑制遺伝子の詳細解析
2.7クラスター解析
2.8DNAマイクロアレイを用いた発現解析の裏技
3DNAチップを用いた生物時計機能解析−ショウジョウバエの交尾行動リズムとホヤの体内時計(石田直理雄、源利文)
3.1DNAマイクロアレイの良し悪し
3.2生物時計遺伝子とその機能
3.3遺伝子のリズム発現と末梢時計
3.4ショウジョウバエの交尾行動リズム
3.5尾索動物カタユウレイボヤにおける概日振動遺伝子群の探索
4マウス(古屋茂樹、吉田一之、平林義雄)
4.1はじめに
4.2アレイ実験を始める前に
4.2.1アレイプラットフォームの選択とレプリケート数
4.2.2基本解析を自力で行うのか
4.3マイクロアレイ実験と解析の実際
4.3.1実験操作
4.3.2遺伝子改変疾患モデルハウスでのアレイ解析の実際
4.4リアルタイムPCR定量による確認実験
4.5おわりに
第2章ヒト
1マイクロアレイを用いた癌の遺伝子発現解析研究(下地尚、野田哲生)
1.1はじめに
1.2マイクロアレイを用いた癌研究の意義
1.3癌の臨床転帰診断
1.3.1白血病の分類・リンパ腫の予後予測
1.3.2癌の再発予測
1.4癌の薬剤感受性診断
1.4.1乳癌の術前化学療法感受性
1.4.2食道癌の化学療法感受性
1.4.3慢性骨髄性白血病におけるグリベック感受性
1.5臨床サンプルを扱う際の問題点
1.6ゲノム情報を用いた癌治療体系の確立に向けて
1.7おわりに
2喘息等アレルギー疾患(斎藤博久)
2.1DNAチップ技術の進歩
2.2アレルギー疾患病態解析に関するDNAチップ技術応用の限界
2.2.1アレルギー疾患における炎症の特徴
2.2.2炎症組織における炎症細胞の数の増加
2.2.3標的細胞分画における少量の異種細胞の混入
2.2.4DNAチップの検出限界
2.3アレルギー疾患病態解析に関する方法DNAチップ技術応用
2.3.1動物モデルの使用
2.3.2高度に精製したヒト細胞の使用
2.3.3マイクロダイセクションなど組織の一定分画の採取
2.3.4細胞種特異的遺伝子発現データベースの利用
2.4トランスクリプトーム研究の今後の動向
3糖尿病(黒川敦彦、山崎義光)
3.1はじめに
3.2動脈硬化の発現・進展と動脈硬化危険因子
3.3疾患感受性遺伝因子としての遺伝子多型
3.4糖尿病合併症感受性遺伝子多型
3.4.1レニン・アンジオテンシン系(RA系)遺伝子
3.4.2脂質代謝関連遺伝子
3.4.3酸化ストレス関連遺伝子
3.4.4その他の遺伝子多型
3.5遺伝子多型と疾患発症
3.6多重遺伝子多型解析
3.7「サインポスト」DMサービスの概要
3.8NAP(Nuclease Activated Probe)-Ligation法によるDNAチップ解析の特徴
3.9おわりに
4動脈硬化(中神啓徳、森下竜一)
4.1はじめに
4.2動脈硬化とは
4.3炎症性サイトカインと動脈硬化
4.4動脈硬化と血液由来幹細胞
4.5遺伝子診断
4.5.1ACE遺伝子多型
4.5.2ACE2遺伝子多型
4.5.3アンジオテンシノーゲン遺伝子多型
4.5.4AT1遺伝子多型
4.5.5AT2遺伝子多型
4.5.6G蛋白β3サブユニット遺伝子多型
4.5.7NOS遺伝子多型
4.5.8インスリン受容体遺伝子
4.5.9LDL受容体遺伝子
4.6末梢血トランスクリプトーム解析
4.7将来的な応用の展望
5肝臓疾患と発現プロファイル(本多政夫、山下太郎、上田晃之、川口和紀、西野隆平、鷹取元、皆川宏貴、金子周一)
5.1はじめに
5.2cDNAマイクロアレイ法を用いたウイルスゲノムの検出
5.3cDNAマイクロアレイ法を用いたゲノムCGH
5.4肝炎・肝細胞のトランスクリプトーム解析
5.4.1Serial Analysis of Gene Expression(SAGE)法を用いた正常肝組織、慢性肝炎、肝細胞癌の解析
5.4.2cDNAマイクロアレイ法を用いた慢性肝炎、肝癌例の解析
5.5肝細胞のプロテオーム解析
5.6おわりに
第3章解析技術
1発現プロファイルの標準化と比較(小西智一)
1.1はじめに
1.2基本となる考え方について
1.3解析は標準化から始まる
1.3.1標準化の原理
1.3.2パラメトリック法
1.3.3実際の計算
1.4標準化したデータを比較する
1.4.1原因から考える視点
1.4.2結果から考える視点
1.5測定結果の再現性を調べる
1.6おわりに
2自己組織化のバイオインフォマティクスへの応用−メタボロームおよびトランスクリプトデータの統合解析に向けて
(中村由紀子、真保陽子、矢野美弦、モハマド・アルタフル・アミン、黒川顕、阿部貴志、木ノ内誠、斉藤和季、池村淑道、金谷重彦)
2.1はじめに
2.2自己組織化法
2.2.1Kohonen SOM
2.2.2Batch-learning SOM
2.2.3BL-SOMによる発現プロファイル解析法
2.3トランスクリプトームおよびメタボロームにおけるデータの統合解析
2.4ダウンロードサイト
3発現プロファイル解析-ネットワーク構築(井元清哉)
3.1はじめに
3.2遺伝子ネットワーク推定
3.2.1記号の整理
3.2.2遺伝子間の関係を知る
3.3解析例
3.3.1Griseofulvinの例:出芽酵母
3.3.2Fenofibrateの例:ヒト血管内皮細胞

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