ナノイオニクス
―最新技術とその展望―
Nanoionics―Recent Advances and Prospect―
[コードNo.2008T575]

■監修/ 山口周(東京大学 教授)
■体裁/ B5判 308ページ
■発行/ 2008年 2月 (株)シーエムシー出版
■定価/ 68,250円(税込価格)

ナノイオニクスが拓く夢の技術とその展望のすべてを解明!
ナノイオニクスの基礎・現象・計測から材料開発・応用までを詳述!
第一線の研究開発者46名による最新成果を網羅!

※ 本書籍はご試読頂けません ※

はじめに
 近年、ナノイオニクス(nanoionics)と呼ばれる現象が固体イオニクスの分野で静かに、そして確実に浸透・発展してきている。このナノイオニクス現象は、「ナノスケールにおけるイオン移動の関与する界面・表面現象」と定義するのが一般的である。これまでは、限定的に「ヘテロ界面における異常に高いイオン移動現象」を指す場合が大半を占めていたが、これはナノイオニクス現象に関する研究の中心が、Liang効果と呼ばれる固体内イオン移動に関する特異なヘテロ界面効果を主な対象としていたためと考えられる。我々はより広義の概念である、「ヘテロ界面において形成されたナノスケールでおこる空間電荷層による間接的効果として生じる(イオンの動的/静的変調によって現われる)物理化学現象」と定義して、ヘテロ界面付近に生じると考えられるイオン欠陥や電子欠陥の濃度変調を積極的に利用した新しい界面機能の設計の実現を目指している。また、我々の定義するナノイオニクス現象では、よく知られたナノサイズ効果そのものではなく、ヘテロ界面付近の数ナノメートル程度の範囲で起こっている界面現象をマクロな特性に反映させる方法に注目している点が特徴といえる。このナノイオニクスというヘテロ界面の広義の物理化学的機能を解明するとともに、機能設計を実現することがナノイオニクスの描く将来の[夢]である。この夢を実現するために、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「ナノイオニクス」が2004年から5カ年の計画でスタートし、約30研究グループがアクティブメンバーとして参画している。このプロジェクトでは本稿で紹介するように、基礎的視点を重視して、ナノイオニクス現象の本質を明らかにするとともに、基盤となる学理の確立とこれに基づいた応用展開を目標としている。この研究の目指すところとその着眼点をまとめるとともに、中間点である2006年度終了時点までに得られている結果やその方向性について紹介することが本書の目的である。
 最後に、ご多忙の中、ご執筆をご快諾いただき、場合によっては原稿催促にもご対応いただいた著者の方々に感謝いたします。
(「はじめに」より)
2008年1月 東京大学 山口周

執筆者一覧(執筆順)
山口周東京大学 大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 教授
下條冬樹熊本大学 大学院自然科学研究科 理学専攻 物理科学講座 准教授
渡邉聡東京大学 大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 教授
丸山俊夫東京工業大学 大学院理工学研究科 材料工学専攻 教授
上田光敏東京工業大学 大学院理工学研究科 材料工学専攻 助教
丹司敬義名古屋大学 エコトピア科学研究所 教授
鈴木俊夫東京大学 大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 教授
佐々木勝寛名古屋大学 大学院工学研究科 量子工学専攻ナノ構造評価学研究グループ 准教授
黒田光太郎名古屋大学 大学院工学研究科 量子工学専攻ナノ構造評価学研究グループ 教授
桑原彰秀京都大学 大学院工学研究科 材料工学専攻 助教
湯上浩雄東北大学 大学院工学研究科 機械システムデザイン工学専攻 教授
河村純一東北大学 多元物質科学研究所 物理機能解析分野 教授
神嶋修東北大学 多元物質科学研究所 物理機能解析分野 助教
前川英己東北大学 大学院工学研究科 金属フロンティア工学専攻 准教授
森利之(独)物質・材料研究機構 燃料電池材料センター 副センター長 ナノイオニクス材料グループリーダー
佐久間隆茨城大学 理工学研究科 教授
半那純一東京工業大学 大学院理工学研究科 教授
松本広重九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 未来化学創造センター 准教授
樋口透東京理科大学 理学部 応用物理学科 助教
尾山由紀子東京大学 大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 助教
三好正悟東京大学 大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 助教
川田達也東北大学 大学院環境科学研究科 環境科学専攻 教授
内本喜晴京都大学 大学院人間・環境学研究科 相関環境学専攻 教授
雨澤浩史東北大学 大学院環境科学研究科 都市環境・環境地理学講座 准教授
酒井夏子(独)産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門 主任研究員
松田厚範豊橋技術科学大学 工学部 物質工学系 教授
小俣孝久大阪大学 大学院工学研究科 マテリアル生産科学専攻 准教授
菊地隆司京都大学 大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻 准教授
石原達己九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 教授
水崎純一郎東北大学 多元物質科学研究所 教授
入山恭寿京都大学 大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻 助教
忠永清治大阪府立大学 大学院工学研究科 応用化学分野 准教授
長尾征洋名古屋大学 大学院環境学研究科 助教
日比野高士名古屋大学 大学院環境学研究科 教授
佐野充名古屋大学 大学院環境学研究科 教授
三浦則雄九州大学 産学連携センター 教授
上田太郎九州大学 大学院総合理工学府 博士後期課程
プラシニツァ
・ブラディミル
九州大学 産学連携センター 特任助教
寺部一弥(独)物質・材料研究機構 ナノシステム機能センター 主席研究員
長田実(独)物質・材料研究機構 ナノスケール物質センター 主幹研究員
長谷川剛(独)物質・材料研究機構 ナノシステム機能センター アソシエートディレクター
栗田典明名古屋工業大学 大学院おもひ領域 准教授
鎌田海九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 助教
稲熊宜之学習院大学 理学部 化学科 教授
勝又哲裕学習院大学 理学部 化学科 助教
鶴井隆雄東北大学 金属材料研究所 産学官連携研究員

構成および内容
序章―高温ナノイオニクスが描く夢の技術(山口周)
1ナノイオニクス現象とは何か?
2ナノイオニクス研究の展開
3ナノイオニクスが拓く「夢の技術」に向かって
【第I編 基礎・現象・計測】
第1章第一原理シミュレーションによるナノイオニクス現象の解明(下條冬樹、渡邉聡)
1はじめに
2ペロブスカイト型酸化物表面における分子吸着過程およびプロトン吸収機構
3Ag/Ag2S/Ag接合系の電気特性
4今後の展望
第2章化学ポテンシャル勾配下における金属酸化物の組織(組成)変化(丸山俊夫、上田光敏)
1はじめに
2酸素ポテンシャル勾配下におかれた2元系金属酸化物(MO)
3酸素ポテンシャル勾配下におかれた3元系金属酸化物
4イオン流束の発散による組織変化(ボイド生成)
4.1計算方法
4.2実験方法
4.3実験結果および考察
5おわりに
第3章電子線ホログラフィによるヘテロ界面における内部電位その場観察(丹司敬義)
1はじめに
2電子線ホログラフィ
2.1ホログラムの記録
2.2ホログラムからの像再生
2.3内部電位で電子波の位相が変化する理由
2.4微細磁気構造観察
3ヘテロ界面における内部電位の観察
4今後の展開
第4章電気化学プロセスにおける組織形成シミュレーション(鈴木俊夫)
1はじめに
2フェーズフィールドモデル
2.1支配方程式の導出
2.2自由エネルギー密度
2.3フェーズフィールドモデルの支配方程式
3フェーズフィールド解析例
3.1系の仮想状態図
3.2電析デンドライトの解析例
4おわりに
第5章イオニクス材料の界面現象解析における透過電子顕微鏡内その場観察の可能性(佐々木勝寛、黒田光太郎)
1緒言
2実験方法
3結果と考察
3.1Cu微粒子の酸化過程
3.2NiO微粒子の還元・酸化過程
3.3Pt担持Ce2Zr2O7の酸化過程
3.4AglよりのAgウィスカーの成長
4まとめ
第6章イオニクス材料における反応素過程の量子力学シミュレーションと材料設計(桑原彰秀)
1緒言
2欠陥形成エネルギーと熱平衡濃度の理論計算
3拡散経路と移動エンタルピーの定量評価
4ヘテロ接合による界面ナノ領域での電子構造
5まとめ
第7章レーザーアブレーション法による高速ナノイオニクス電解質の創製(湯上浩雄)
1はじめに
2実験方法
3結果と考察
4おわりに
第8章ナノ複合体のイオン伝導―伝導度増加とパーコレーション問題―(河村純一、神嶋修、前川英己)
1ナノ複合イオン伝導体研究の歴史
2複合体のイオン伝導理論
2.1直列近似
2.2並列近似
2.3対数加成則
2.4混合則(mixing rule)
2.5Uvarovの一般化された混合則
2.6Brick-Wall近似
2.7Clausius-Mossoti-Wagnerの近似
2.8有効媒質近似
2.9パーコレーション理論とスケーリング則
2.10一般化された有効媒質近似
3イオン伝導性ナノ構造体の例
3.1絶縁体分散効果
3.2酸化物メソ多孔体とLil複合系のイオン伝導度
3.3Agl-有機物系ガラス
3.4Agl-酸化物系ガラス
3.5α-Agl微結晶析出ガラス
3.6銀カルコゲナイド分相ガラス
3.7ナフィオン・水系
4結論
第9章ソフト化学的手法によるナノイオニクスバルク体の創製(森利之)
1はじめに
2焼結バルク体中に現れるナノ構造を理解する
3ナノ構造の特徴がなぜマクロ物性に影響を与えるのかという点に関する考察
3.1酸化物イオン伝導体の場合
3.2半導体の場合
4ナノ構造の最適化とバルク体作製手法の提案
5おわりに
第10章コンポジット系超イオン導電体におけるナノスケール効果(佐久間隆)
1はじめに
2Liイオン導電体複合系の中性子回折
3結晶およびガラス複合系超イオン導電体
4イオン結晶における熱振動の原子間相関効果
5Pb化合物における熱振動の原子間相関効果
6おわりに
第11章液晶ナノ分子凝集相における伝導(半那純一)
1はじめに
2液晶物質における電子伝導の発見
3液晶物質におけるイオン伝導
4電子伝導とイオン伝導の共存と液晶物質の凝集構造
5伝導に関わるキャリア生成
6キャリア注入特性の改善
7液晶分子凝集相の興味
第12章金属ヘテロ界面における高温型プロトン伝導体の新規イオン機能の探索(松本広重)
1はじめに
2高温型プロトン伝導体の欠陥平衡
3金属接触界面
4白金を分散したSrZr0.9Y0.1O3-αの電気伝導度
5パーコレーションモデル
6白金/SrZr0.9Y0.1O3-α界面の直流分極特性
7おわりに
第13章電子分光法によるnano-NEMCA現象の追求(山口周、樋口透、尾山由紀子、三好正悟)
1はじめに
2表面の反応活性と電子構造
3電子分光法を用いた研究のアプローチ
4おわりに
第14章高温固体表面の動的挙動の計測によるnano-NEMCA効果の検証(川田達也)
1固体電解質上の電極反応の応用と速度論
2高温電極反応の速度論と過電圧
3NEMCA効果と表面の動的計測手法の開発
4気-固反応のナノイオニクス−表面種の静的な変調
5(La,Sr)CoO3/(La,Sr)2CoO4ヘテロ界面でのナノイオニクス効果の可能性
6ナノNEMCA―静的・動的な界面変調の融合へ
第15章ヘテロ接触界面のイオン移動現象のその場観察(内本喜晴、雨澤浩史、酒井夏子)
1はじめに
2二次イオン質量分析(SIMS)法
3その場X線吸収(XAFS)法
4ナノXAFS法
【第II編 材料開発・応用】
第1章高密度表面欠陥型ナノプロトニクス材料のメカノケミカル合成(松田厚範)
1はじめに
2リン酸塩系固体酸のメカノケミカル処理
3硫酸水素セシウム-リン酸水素セシウム系複合体のメカノケミカル合成
4ヘテロポリ酸のプロトンをCsで一部置換した部分中和塩のメカノケミカル合成
5ヘテロポリ酸と酸化物のメカノケミカル処理
6おわりに
第2章コア/シェル複合構造を持つ単分散ナノ結晶の創製(小俣孝久)
1はじめに
2コア/シェル型複合ナノ結晶の作製
3複合ナノ結晶からバルク体へ
4おわりに
第3章固体酸化物形燃料電池における高温反応場界面形成の科学(菊地隆司)
1はじめに
2通電効果
3実験方法
4不可逆的な活性化過程
5可逆的な活性化過程
6おわりに
第4章新規酸素イオン伝導体のナノ薄膜を用いる超低温作動型SOFCの開発(石原達己)
1はじめに
2低温作動型SOFC開発の現状
3酸素イオン伝導体におけるナノイオニクス効果
4新規酸素イオン伝導体膜を利用した低温作動型のSOFC
5おわりに
第5章ナノイオニクス構造高機能固体酸化物形燃料電池の創製(水崎純一郎)
1はじめに
2SOFCの大局的開発課題
2.1社会的背景
2.2燃料電池の原理・種類と開発動向
2.3SOFCの構成
2.4技術開発動向
3SOFCとナノ設計
3.1SOFCの反応プロセスとナノ設計による高機構化の可能性
3.2高温で安定なナノヘテロ構造構築の可能性
4それぞれのSOFC反応過程におけるナノヘテロ構造制御と特性改善
4.1燃料電極とインターコネクタ材料
4.2空気電極と214相
4.3第2相を分散した電解質によるイオン導電率変化
5薄膜と物性
第6章ナノ粒子活物質へのリチウムイオンの挿入脱離反応のダイナミクス(入山恭寿)
1はじめに
2リチウムイオン二次電池のナノ活物質材料の開発と機能
2.1ナノ粒子活物質材料の合成
2.2ナノ粒子活物質の電気化学的挙動
2.3ナノ粒子活物質と相変化
3おわりに
第7章ゾル-ゲル法による電極―電解質ナノ固体界面形成(忠永清治)
1はじめに
2ゾル-ゲル法による全固体型大容量キャパシタの構築
3無機系ベース複合体電解質を用いた中温作動型燃料電池の構築と評価
4おわりに
第8章ナノ分極型高選択反応性電極の創製(長尾征洋、日比野高士、佐野充)
1はじめに
2燃料電池電解質への応用
3白金代替触媒の開発
4NOx電解リアクターおよびセンサの開発
5局所電池型NOx電解触媒の開発
6総括
第9章ナノヘテロ接合界面の特異的ガス認識機能を用いた高性能センシングデバイス(三浦則雄、上田太郎、プラシニツァ・ブラディミル)
1はじめに
2安定化ジルコニアセンサの代表的研究例
3センシングデバイスに対するナノサイズ効果の期待
4検知極膜厚をナノサイズ化したセンサ素子
5次世代高性能センシングデバイス
第10章ナノプローブ加工技術を用いたナノイオニクス素子の開発(寺部一弥、長田実、長谷川剛)
1はじめに
2多孔質アルミナテンプレートを利用したイオン伝導体ナノワイヤの作製
3ナノプローブ法によるイオン伝導体ナノワイヤの評価
3.1近接場光学顕微鏡によるAg/Ag2Sナノワイヤの分光測定
3.2原子間力顕微鏡によるAg/Ag2Sナノワイヤの電流-電圧特性の評価
4ナノ領域でのイオンと電子との相互作用の制御
5おわりに
第11章アルミナ薄膜を固体電解質とした水素センシングデバイス(栗田典明)
1はじめに
2アルミナと水素
3アルミナの薄膜化
4酸化膜を利用した場合の課題
4.1酸化膜の成長の問題
4.2アルミナ膜/金属ヘテロ界面における電荷移動の影響
4.3標準極側の水素活量の問題
4.4アルミナ膜の密着性の問題
4.5生成したアルミナ膜への他元素の混入の問題
5βNiAlにおける実験と考察
5.1Niをドープしたアルミナのプロトン導電特性
5.2βNiAl表面に生成したアルミナ膜の性状
5.3βNiAl表面アルミナ膜を固体電解質とした電池の起電力特性
6おわりに
第12章イオン伝導体微小界面を反応場とした物質創製・加工技術の開発(鎌田海)
1はじめに
2イオン伝導体微小界面を利用した局所イオン注入法
3イオン伝導体微小界面を利用した固体電気化学微細加工法
4おわりに
第13章イオン伝導体/溶融塩間のイオン交換反応を用いた機能性物質の創製(稲熊宜之、勝又哲裕、鶴井隆雄)
1緒言
2ペロブスカイト型リチウムイオン伝導体を用いたイオン交換反応
2.1プロトンとのイオン交換
2.22価イオンとのイオン交換―マクロな描像とナノ構造から見たイオン交換挙動
2.3イオン交換による機能性の発現
3イオン交換による遷移金属イオンまたは希土類イオンのドーピングとナノ粒子蛍光体への応用の可能性
4総括および今後の展望

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