TOP セミナー 書籍 社内研修 セミナーQ&A 書籍Q&A お問い合せ 会社概要

  メルマガ 「いいテク・ニュース」 雑記帳 2016年1月21日(Vol.133) 「凧」       ≫雑記帳トップへ



  「凧」


日本ではお正月の風物詩としておなじみの「凧」。
その凧、もともとは「いか」「いかのぼり」と呼ばれていました。
日本で凧が「いか」と呼ばれていた由来は凧が紙の尾を垂らし空に揚る姿が「烏賊」に似ている
からです。
欧州各国の凧は空中を飛ぶ動物の名前がつけられていることが多く、英語で「とび」、フランス
語では「くわがたむし」、スペイン語では彗星を意味する単語で呼ばれ、日本のように水生動物
の呼び名は珍しいようです。

今回はそんな「凧」についての豆知識をお届けします。


◎「いかのぼり」がなぜ「たこ」になったのか?凧の語源
 凧は中国から朝鮮を通じて日本に渡来し、主に通信手段の狼煙(のろし)として使われていま
 した。
 鎌倉時代までは凧の日本名は無く、中国名の紙鳶(しえん)、紙老鴟(しろうし)と呼ばれ、
 室町時代に「いかのぼり」「いか」と呼ばれるようになりました。
 また、凧は漢字ではなく日本で作られた国字で、風の略体である几(かぜがまえ)のなかに巾
 (ぬの)で構成されています。
 江戸時代には「いかのぼり」を売る店もできて、日常的な娯楽となりましたが、「いかのぼり
 」を揚げている人同士で喧嘩が多く発生したり、通行の邪魔になったり、大名行列の中に落ち
 たりといったトラブルが続き、1650年代に「いかのぼり禁止令」が出ます。
 しかし、庶民に人気の娯楽だったので、やめたくないということから、「これの名前はたこで
 す。いかではありません。」といような屁理屈(へりくつ)をつけて凧揚げを続け、また、上
 方では「いか」「いかのぼり」と呼ばれていたことに対抗して、江戸では「たこ」と呼ぶよう
 になりました。

◎源為朝は我が子を伊豆大島から脱出させるために大凧に乗せた?
 曲亭馬琴(きょくてい ばきん)(1767-1848)作、葛飾北斎(かつしか ほくさい)(1760-18
 49)画による『椿説弓張月』(ちんせつゆみはりづき)のなかで、伊豆大島に流刑になってい
 た源為朝(みなもとの ためとも)(1139-1170)は、敵の船団が来襲する前に伊豆大島の女性
 ささらえとの間にできた子供、朝稚(ともわか)を大凧に乗せて、伊豆大島から脱出させ、足
 利家の養子にする計略を立てます。
 朝稚を大凧にくくりつけて空に揚げ糸を切り、朝稚は無事下田の浜辺に着陸し、後の足利将軍
 家につながる設定となっています。  
 この『椿説弓張月』の木版挿絵は、馬琴が文章と画面構成を決める下絵を書き、後から北斎が
 絵の清書をして彫師や摺師、字彫り職人の手を経て本ができました。
 ちなみに、その後北斎と馬琴は天才どうしでソリが合わず喧嘩別れしています。 

◎大凧に乗って名古屋城の金の鯱(しゃちほこ)の鱗3枚を盗んだ怪盗
 「天下様でもかなわぬものは金の鯱あまざらし」と歌にも詠まれたように、当時、名古屋城の
 金の鯱は屋外に置かれているものとしては、世界最大の金でした。
 寄木造の芯の表面に金の板を打ち付けたもので作られており、当時流通していた慶長大判で19
 40枚、純金換算で215.3kgもの金が使われていました。
 金は富の象徴であり、誰もが手にしたいと考えるもの。
 遥かに見上げる天守閣の上とはいえ、その輝きを眺めれば、欲望を抑えきれなくなる者が現れ
 ても不思議はないでしょう。
 さて、この名古屋城の金の鯱を大凧に自分をはりつけ盗んだ怪盗、柿木金助(かきのき きんす
 け)(生年不詳-1763)の話は天明3年(1783年)大坂で上演された、初代並木五瓶(なみき ご
 へい)(1747-1808)作の芝居「傾城黄金鯱」(けいせいきんのしゃちほこ)によって世に知ら
 れるようになりました。 
 ただし、この話は伝説で、実際は土蔵に侵入し舟を使って逃走したという説と、この話は『金
 助罪状』や『金鯱紛失記』の文献に載っているから実話だろうという2説があります。
 
◎ナイアガラの架橋は凧揚げから始まった!!
 ナイアガラの滝は幅244メートル(800フィート)、深さ69メートル(225フィート)あり、橋
 が架かるまで、渓谷を渡る唯一の方法は、上流まで行って小さなフェリーで渡ることでした。
 そこで、1846年にナイアガラに橋を架けてカナダとアメリカの間をもっと自由に往来できる
 ようにする計画が持ち上がりました。
 1848年1月、当時世界最長の吊橋をペンシルベニアの川に建設した実績があったチャールス・
 エレットという技師が、ナイアガラの吊橋建設に着手しました。
 問題は渓谷を跨いで最初の糸をどのように渡すかでしたが、エレットはこの問題についてスタ
 ッフと討議を重ね、凧揚げ大会を開催し、対岸に凧糸を渡した最初の人に賞金10ドル(5ドル
 説もある)を出すというものでした。
 1848年1月に凧揚げのコンテストが開催され、成功するまで8日もかかりましたが、16才のアメ
 リカの少年ホーマン・ウォルシュが対岸に凧糸を渡し、賞金を獲得しました。
 この凧糸をより強い糸に換えていき、その後、ロープ、ワイヤーケーブルと強くしていき、
 1848年1月31日には「アメリカとカナダの間は直径12.7ミリ(0.5インチ)のケーブルで結ばれ
 た。」と地元新聞で伝えられました。

◎1882年には240畳の大凧が揚げられた
 日本国内の凧揚げ大会はお正月のほか、5月の端午の節句の前後に子供の成長を願って行なわれ
 ることが多いようです。
 その中でも、東近江大凧まつりは江戸時代中期に男子の出生を祝い、鯉幟(こいのぼり)と同
 じように揚げられたのが始まりとされています。
 現在も、面積100畳(縦13メートル、横12メートル)、重さ約700キロもの100畳敷き「東近江大
 凧」が有名です。
 ちなみに、1882年には240畳の大凧が揚げられた記録があります。(最近の開催は毎年5月の最
 終日曜日となっています。)

◎凧と俳句
 凧はお正月によく揚がっているので、絶対に新年の季語だと思っていましたが、「凧」だけな
 ら春の季語になります。
 江戸時代の歳時記には「春の風は下から吹き上げる」ので凧がよく揚がるとされています。
 凧揚げ大会が春に開催される確率が高いのはそんな理由もあったようです。
 「正月の凧」とすれば新年の季語になります。
 ここでは、凧(たこ)、(いかのぼり)を詠んだ句を選んでみました。

  凧きのふの空のありどころ(凧=いかのぼり)
  与謝蕪村(よさ ぶそん)(1716--1784)

  切れ几巾の夕越えゆくや待乳山(几巾=たこ)(待乳山=まつちやま、浅草本龍院境内の小
  さな丘)
  大島蓼太(おおしま りょうた)(1718-1787)

  凧抱いたなりですやすや寝たりけり
  小林一茶(こばやし いっさ)(1763-1828)

  凧百間の糸を上りけり(凧=いかのぼり)(百間=ひゃっけん、一間は六尺(約1.818メート
  ル))
  河東碧梧桐(かわひがし へきごどう)(1873-1937)
 
  夕空にぐん〜上る凧のあり
  高濱虚子(たかはま きょし)(1874-1959) 

 私も詠んでみました。

  睨まれてとんびくるりと武者絵凧
  白井芳雄
      
今回は「凧」についてのいろいろをお届けしました。

全体を通じての参考文献、出典:『大辞林(第二版)』(三省堂)

               『日本大百科全書』(小学館)

                           『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』(講談社)
                (飯田龍太・稲畑汀子・金子兜太・沢木欣一監修)

                          『角川俳句大歳時記 春・夏・秋・冬』

                           白井明大・有賀一広
                           『日本の七十二候を楽しむ−旧暦のある暮らし−』(東邦出版)

                斎藤忠夫
                              『世界の凧』(保育社)                      
 
           参考サイト:フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)

                日本の凧の会
               (http://www.tako.gr.jp/jpn/main/home.html)

                                凧の話 淡島寒月
               (http://www.aozora.gr.jp/cards/000388/files/4957_8646.
                                html)


最後までお読みいただきありがとうございました。
   
                   (株)技術情報センター メルマガ担当 白井芳雄

本メールマガジンのご感想や本メールマガジンへのご意見・ご要望等melmaga@tic-co.com まで、
どしどしお寄せ下さい。




株式会社 技術情報センター  〒530-0038 大阪市北区紅梅町2-18 南森町共同ビル 3F
TEL:06−6358−0141  FAX:06−6358−0134  E-mail:info@tic-co.com