本書は、分析者を主な対象としつつ、XPSに関わる様々な立場の方にも役立つ実務書である。分析を外部に依頼する技術者、装置の設計開発者、装置の保守・技術スタッフなど、実務でXPSに関わる人は多く、それぞれの役割は異なる。しかし、測定手法の選定から実際の測定・解析・考察までの一連の流れを経て、最後に得られる「必要な情報」の良否を左右する要素は、共通して知る必要があると考える。これは、その「必要な情報」が科学的な主張や判断の拠り所となり、それらの信頼性の確保につながるからである。
本書では、専門性や目的を問わない、XPSに関わる多くの方に求められる知識の共通基盤をはじめの章に掲載する。その後、分析者、あるいは更に理解を深めようとする読者に向けて、本書を読み進めることで議論や手法を更に深めていけるような構成としている。最後の一問一答は、自分がどこまで理解できているか、曖昧な部分はないかを顧みる、思考の棚卸の機会になればよいと思う。
この実務書が、多くの方にとってXPSを活用した科学的判断の信頼性を支えるための1冊となり、測定・解析によってもたらされる恩恵を最大限に享受できる一助となれば幸いである。(書籍担当)
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| 第1章 |
X線光電子分光法活用のための基礎と原理 |
| はじめに |
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| 第1節 | XPS分析者の心得 |
| 第2節 | 目的に応じた表面分析手法の選定 |
| 第3節 | X線光電子分光法(XPS、ESCA)の原理と基本 |
| 第4節 | 試料の取り扱い |
| 第5節 | 分析会社へ依頼する際の留意点とポイント |
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| 第2章 |
XPS測定・解析の理論的基盤と精度向上のためのアプローチ |
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| 第1節 | 光電子分光の物理的描像とスペクトル解析における不確かさの存在 |
| はじめに |
| 1. | バックグラウンドの処理 |
| 2. | スペクトルのピーク形状 |
| 3. | スペクトルのピークシフトの考え方 |
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| 第2節 | 結論の不確かさを減らすための測定手法および条件の最適化 |
| はじめに |
| 1. | 測定手法 |
| 1.1 | X線光電子分光法の原理 |
| 1.2 | X線源 |
| 1.3 | 定性分析、化学状態分析 |
| 1.4 | 定量分析 |
| 1.5 | 深さ方向分析 |
| 1.6 | 帯電補正 |
| 1.7 | 材料により異なる試料調整法 |
| 2. | 測定条件の最適化と再現性確保 |
| 2.1 | 測定条件の意義 |
| 2.2 | パスエネルギーの設定と意味 |
| 2.3 | エネルギーステップ幅とデータ品質 |
| 2.4 | スキャン回数 |
| おわりに |
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| 第3節 | スペクトル解析の基本と留意点 |
| はじめに |
| 1. | スペクトル構成 ・スペクトル処理 |
| 1.1 | 実測スペクトルの主ピーク構造 |
| 1.2 | スペクトルの副構造 |
| 1.3 | スペクトル処理の意義 |
| 2. | バックグラウンド処理の手法と比較 |
| 2.1 | バックグラウンド処理の意義 |
| 2.2 | Shirley法(経験的積分モデル) |
| 2.3 | Tougaard法(非弾性散乱モデル) |
| 2.4 | その他のバックグラウンド手法 |
| 2.5 | バックグラウンド選択と定量精度 |
| 3. | ピーク分離の理論と実践 |
| 3.1 | ピーク分離の目的と意義 |
| 3.2 | ピーク形状関数 |
| 3.3 | ピーク分離の手順 |
| 3.4 | ピーク分離結果の評価 |
| 3.5 | ピーク分離の例 |
| おわりに |
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| 第4節 | XPS装置の管理運営 |
| はじめに |
| 1. | 装置管理の重要性と課題 |
| 2. | 超高真空装置の構成とリスク要因 |
| 3. | 設置環境とメンテナンススペースの設計 |
| 4. | 装置の定期メンテナンス |
| 5. | 教育と運用ルールの標準化 |
| 5.1 | 利用者数とトラブル発生率の関係 |
| 5.2 | 装置利用のための教育体系の構築 |
| 5.3 | 初心者視点のマニュアル作成1) |
| 5.4 | 測定条件の標準化と報告の義務化 |
| おわりに |
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| 第5節 | 表面分析データの信頼性を確保するために |
| はじめに |
| 1. | 表面分析における信頼性 |
| 2. | 各々のRの信頼精度に関わる要求 |
| 3. | XPS計測におけるエネルギー軸の繰り返し精度の評価 |
| まとめ |
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| 第6節 | XPS定量分析における精確さに影響する要因の分析 |
| はじめに |
| 1. | 精確さと真度及び精度の関係 |
| 2. | 定量分析の測定値の精確さに影響する要因 |
| 2.1 | 相対感度係数を使った定量分析 |
| 2.2 | 基準物質を使った定量分析 |
| 2.3 | 定量分析校正用標準物質の現状 |
| 3. | 定量分析の信号強度の精確さの検討 |
| 3.1 | 精確さを調べるための試料 |
| 3.2 | ドットアレイ試料 |
| 3.3 | ドットアレイの測定条件とスペクトルの解析方法 |
| 3.4 | W4f及びSi2pの信号強度及びピーク位置の精確さ |
| 3.5 | W4f及びSi2pの信号強度の比の到達精度 |
| 3.6 | 信号強度のばらつきと温度変動の関係 |
| 3.7 | X線照射パワーの変動による信号強度のゆらぎ |
| おわりに |
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| 第3章 |
XPS測定・解析技術の進展 |
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| 第1節 | 測定技術の発展 |
| 〔1〕 | 硬X線光電子分光法(HAXPES) |
| はじめに |
| 1. | HAXPESの原理と特徴 |
| 1.1 | 高運動エネルギー光電子の発生と脱出深さ |
| 1.2 | 深い内殻準位 |
| 1.3 | HAXPESスペクトルに現れる物理現象 |
| 1.3.1 | 反跳効果 |
| 1.3.2 | 遮蔽効果 |
| 2. | 放射光施設におけるHAXPES実験 |
| 2.1 | HAXPESに求められる光源と分光器 |
| 2.2 | 放射光実験施設の具体例:SPring-8のHAXPESビームライン |
| 3. | HAXPESによる各種先端材料の応用事例 |
| 3.1 | 半導体デバイス |
| 3.2 | 二次電池材料 |
| 3.3 | 有機半導体トランジスタ |
| 3.4 | 燃料電池用触媒 |
| 4. | 将来展望とまとめ |
| 4.1 | 実用化へ向けた課題と取り組み状況 |
| 4.1.1 | スペクトルデータベース構築に関する取り組み |
| 4.1.2 | 定量分析の確立に向けた取り組み |
| 4.2 | 次世代放射光と実験技術の進展 |
| まとめ |
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| 〔2〕 | 雰囲気制御 X 線光電子分光(NAP-XPS) |
| はじめに |
| 1. | NAP-XPSの実験装置と測定原理 |
| 2. | NAP-XPSを用いた触媒反応解析 |
| おわりに |
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| 第2節 | High-throughputスペクトルデータ解析手法の開発と高速自動ピークフィッティング |
| はじめに |
| 1. | 高次元スペクトルデータの低次元化と分類:Pd(111)表面スラブモデルの例 |
| 2. | 事前知識に基づいたスペクトル形状解析における従来手法の課題 |
| 3. | 改良型EMアルゴリズムによる高速自動ピーク検知 |
| 3.1 | 混合ガウスモデル(GMM)とEMアルゴリズムの原理 |
| 3.2 | ヒストグラム形式による計算アルゴリズムの最適化 |
| 3.3 | バックグラウンド推定の自動化、モデルの拡張性と初期値依存性 |
| 3.4 | 実データ解析事例:空間分布情報の可視化と均一性評価 |
| おわりに |
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| 第3節 | 逆アプローチによるベイズ計測の応用とスペクトル解析の高度化 |
| はじめに |
| 1. | XPSスペクトル解析を逆問題として捉える視点 |
| 1.1 | 順問題と逆問題の定式化 |
| 1.2 | 逆問題の非一意性と従来ピークフィッティングの限界 |
| 2. | ベイズ計測によるスペクトル解析高度化の原理と具体例 |
| 2.1 | 点推定と分布推定の違い |
| 2.2 | ベイズ自由エネルギーとモデル選択 |
| 2.3 | 線形回帰モデルによるベイズ計測の具体例 |
| 2.3.1 | 線形回帰モデルの定式化 |
| 2.3.2 | 最小二乗解の導出とその性質 |
| 2.3.3 | ベイズ推定への拡張 |
| 2.3.4 | ベイズ自由エネルギー最適化によるモデル比較 |
| 3. | XPSスペクトル分解への適用 |
| 3.1 | XPSスペクトル分解モデルの定式化 |
| 3.2 | ベイズ逆問題としてのXPSスペクトル解析 |
| 3.3 | ベイズ自由エネルギーによるピーク数推定
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| 4. | 数値実験:人工データによる検証
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| 4.1 | 確率分布の数値的取り扱いと交換モンテカルロ法
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| 4.2 | 線形モデルにおける数値実験 |
| 4.2.1 | 人工データの生成条件 |
| 4.2.2 | ベイズ自由エネルギーによる雑音分散の推定 |
| 4.2.3 | パラメータ分布の推定 |
| 4.3 | XPSスペクトル分解における数値実験 |
| 4.3.1 | 人工XPSスペクトルデータの生成条件 |
| 4.3.2 | ベイズ自由エネルギーによるピーク数推定 |
| 4.3.3 | ピークパラメータの事後分布推定
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| おわりに |
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| 第4節 | スペクトル超解像解析によるX線光電子分光測定時間の短縮 |
| はじめに |
| 1. | ベイズ超解像とスペクトルデータへの展開 |
| 2. | スペクトル超解像によるXPS測定時間の短縮 |
| 3. | スペクトル超解像解析ソフトの開発 |
| おわりに |
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| 第4章 |
聞くに聞けない表面分析法の疑問Q&A【XPS編】 |
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| はじめに |
| Q1 | 表面分析はなぜ真空中で行うのですか? |
| Q2 | 光電子分光法(XPS)とオージェ電子分光法(AES)とはどのように使い分けたら良いのですか? |
| Q3 | なぜXPSの線源はAl Kαが主流なのでしょうか? |
| Q4 | XPSで水素とヘリウムの分析が出来ないのはなぜですか? |
| Q5 | Agの1sや2sピークはなぜXPSで観測されないのですか? |
| Q6 | XPSは表面敏感な手法と知られていますが、どのくらいの範囲(深さ)を測定しているのでしょうか? |
| Q7 | 電子の非弾性散乱平均自由行程(Inelastic Mean Free Path、IMFP)は実験的に測定できますか? |
| Q8 | スペクトル全体形状がXPSでは右下がり、AESでは右上がりの形状になるのはなぜですか? |
| Q9 | XPSの横軸の結合エネルギーは、なぜ左側の値が大きいのですか? |
| Q10 | 測定されたカウント数はなぜカウント数の平方根の誤差を持つのですか? |
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