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  メルマガ 「いいテク・ニュース」 雑記帳 2016年7月27日(Vol.136)「すし」「鮓」「鮨」「寿司」 ≫雑記帳トップへ



   「すし」「鮓」「鮨」「寿司」


回転ずしの市場規模は約4000億円。
日本の総人口が約1億2700万人とされていますので、赤ちゃんからお年寄りまで1年間に回転ずし
のみで1人あたり平均3,150円を消費していることになります。
これに回転ずし以外のおすし屋さんの売上げを加えると、いかに日本人がすし好きなのかわかり
ます。
今回は世界文化遺産でもある和食の代表格「すし」「鮓」「鮨」「寿司」にまつわるおもしろ豆
知識をお届けします。


1.すしの語源
  すしの語源は「すっぱい」を意味する「酸し(すし)」であるとした説が有力で、古くは魚介
  類を塩に漬け込み、自然発酵させた食品をいいました。
  すしには「鮓」「鮨」「寿司」の字が使われます。
  「鮓」は塩や酒糟(さけかす)などに漬けた魚や、発酵させた飯に魚を漬け込んだ保存食を意
  味します。
  「鮨」は中国で「魚の塩辛」を意味する文字ですが、「鮓」の持つ意味と混同され用いられ
  るようになりました。
  現在で多く使われる「寿司」は江戸末期に作られた当て字で、「寿を司る(ことぶきをつか
  さどる)」という縁起担ぎの意味からです。

2.「にぎりずし」は気の短い江戸っ子のアイディアから
  江戸時代は、南蛮渡来の天ぷらをはじめ、近代日本の食文化を形づくる多くの料理が生まれ
  た時代です。
  「すし」の原形は、魚をごはんに漬け込むことで「旨み」と「保存性」を高めた「なれずし
  」や「押しずし」のようなものでした。
  江戸時代になって、ごはんにお酢を混ぜるようになり現在の「にぎりずし」が始まりました
  。
  いままでの「すし」の原形と比べて、調理時間が短かったため当時は「早ずし」と呼ばれて
  いました。
  「すし」が江戸の食文化に浸透していった背景には、江戸っ子の気の短さと酒粕から酢を造
  る新しい技術が尾州(愛知県)半田の酒蔵元で開発され、手ごろな価格で酢が手に入るように
  なったことも大きく影響したと考えられています。

3.昔の屋台のすし屋では酒を売らなかった。
  現在のすし屋でアルコールを置いていない店など考えられませんが、料理屋風のすし店は別
  として、昔の屋台の店では酒を扱っていませんでした。
  その理由は、屋台ではすし職人一人でなにもかもしなければならず、忙しくて酒まで手が回
  らなかったことと、お客もそのころは、屋台のすしで酒を飲もうという考えはなく、あくま
  でもすしを食べることが目的だったからです。すし屋のお茶の湯のみ茶碗が大きいのも、何
  度も入れ替えをしなくて済むようにという屋台店から始まったサービスで、それが現在のす
  し店に受け継がれています。

4.すし屋には業界用語というか符牒があります。語源もおもしろいので一読して下さい。
 4-1 すし業界で数を表すもの。
  0=やま
   すし屋のネタは海産物・水産物が多く、山のものはないので「なし」=「0」=やま。

  1=ピン
   ポルトガル語で「点」を意味する「pinta(ピンタ)」から。

  2=リャン
   中国語の「2」の意味の「両(りゃん)」から。麻雀の「両面待ち」の「両(りゃん)」で
   す。

  3=ゲタ
   ゲタ(下駄)の鼻緒をとめる穴が3つあるから。

  4=ダリ
   トルコ語で「4」を表わす「ドルトウ」→「ドル」→「ダリ」となまっていった結果、
   4=ダリに。

  5=メのジ
   「目」という漢字の画数が5画だから。

  6=ろんじ
   「六の字」からきているという説が有力。

  7=せいなん
   地図を見る場合、時間の7時のところが西南にあたるから。

  8=バンド
   バンド→はちまき→はち→8説。
   軍服のバンド(ベルト)の穴が8つあったから説。
   8つの国が集まっている地名「坂東(ばんどう)」から説、等いろんな説があります。

  9=きわ
   1ケタの最後の数字、際(きわ)の数字なので。

  10=ピンコロ
   「ぴんまる」とも言われます。
   ピンの横に丸くてコロッとしたのがついているから。

  11=あさ
   11は1(ピン)がふたつ→ピンピン→男性は朝ピンピンになるので。

 4-2 すし関連商品などの業界用語(符牒)
  あにき=先に仕込み準備をしていた食材。
   前日のシャリを指して「あんちゃんのしゃり」などと使います。
   反対にあとから使う食材を「おとうと」といいます。

  ありのみ=「有りの実」と書き、意味は「梨(なし)」のこと。
   縁起をかついで、逆の「有りの実」となり、同じように「すりばち」「するめ」は「摩る
   (する)」=「つかい果たす」に通じるので「あたりばち」「あたりめ」といいます。

  片思い=アワビのこと。
   アワビは二枚貝の片側だけに見えることから、自分が慕っているだけで、相手にはその気
   がない恋をいいます。『万葉集』の(伊勢の海人が朝夕ごとに海に潜って取ってくるアワビ
   のように私は片思いばかりしている)という歌から。

  ガレージ=シャコ(蝦蛄)のこと。
   英語で車庫はガレージというダジャレから。

  きづ=かんぴょうのこと。
   大阪府浪速区大国にあったかんぴょうの取引地、木津市場から。

  新子(しんこ)=このしろの幼魚で4〜5cmくらいのもの。
   このしろは大きさで呼び名が変わります。最小を新子、中をこはだ、大をこのしろ。
   小さいほど希少で価格が高いという珍しい魚で、特に関東地方でこの傾向が強く、東京で
   は新子の初物には、1kg数万円という高値がつきます。 

  助六=かんぴょうの海苔巻きといなりずしの組み合わせのこと。
   歌舞伎十八番の一つである『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』に由来して
   助六といいます。江戸一番の伊達男(だておとこ)、助六が吉原の花魁(おいらん)である揚
   巻(あげまき)のもとへと登場する時に、黒羽二重(くろはぶたえ)の紫縮緬(むらさきちりめ
   ん)の鉢巻をして蛇の目傘をさしていることから、この鉢巻を海苔巻きに見立て、花魁の名
   前である揚巻きをいなりずしにひっかけています。

  なみだ=わさびのこと。
   すしには欠かせない薬味ですが、ききすぎると涙が出るから。

  むらさき=醤油のこと。
   もともとは宮中用語でしたが、色からの連想でこう呼ばれるようになりました。

  弥助=寿司や寿司屋のこと。
   人形浄瑠璃・歌舞伎『義経千本桜』の三段目切「すし屋」の場で、源氏の追手を逃れた平
   維盛がすし屋の手代「弥助」に身をやつし、匿(かくま)われていたことから。

5.値段が掲示されていない、伝統的な高級すし店のお勘定
  最近は、一皿毎の価格が明示されている回転ずしやすし専門店であっても、一人一食分のセ
  ットメニューの価格が明示されている方式が広く普及しています。
  しかし、伝統的な一部のすし屋においては、一つ一つのすしに値段が掲示されていない場合
  もあります。
  これはすしネタが時価の影響を受けるからです。
  すしの職人でも他の店に行けば値段が分からないとか、どんぶり勘定で客を見て値段を決め
  ている店もあるようです。
  また、同じネタでも客を見て切る部位を変えるので値段も違うし、「滞在時間の長い客」や
  「来てほしくない客」の場合値段が高くなると公言する職人もいます。
  大トロがいくらか職人にきいてから注文したりしなかったりも無粋ですし、お勘定がいくら
  になるかヒヤヒヤしながら食べるのはいくら高級ずしでも遠慮したいですね。

6.鮓(鮨)と俳句
  現在のようなにぎりずしや散らしずしが普及したのは江戸時代以降。
  熟鮓(なれずし)に用いた酢が腐敗を防いだという意味から、熟鮓以外のすしも、夏の季語に
  なります。
  ここでは「鮓」「鮨」で詠まれた句を挙げてみました。

  笋の鮓を啼き出せほととぎす(笋=たけのこ)(啼き出せ=なきだせ)
  内藤丈草(ないとう じょうそう)(1662-1704)

  鮒鮓や彦根の城に雲かかる
  与謝蕪村(よさ ぶそん)(1716-1784)

  鯛鮓や一門三十五六人
  正岡子規(まさおか しき)(1867-1902)

  川床や法師の中を鮓運ぶ
  長谷川零餘子(はせがわ れいよし)(1886-1928)

  鯖鮓に歌舞伎うちはを貰ひけり
  長谷川かな女(はせがわ かなじょ)(1887-1969)

  我老いて柿の葉鮓の物語
  阿波野青畝(あわの せいほ)(1899-1992)

  目張鮨割ってわれらが国見かな(目張鮨=めはりずし)
  飯島晴子(いいじま はるこ)(1921-2000)

  釣瓶鮨ありと聞き来し町暑し
  森田 峠(もりた とうげ)(1924-2013)

  駆け落ちをしての鮨屋や鱧の皮(鱧=はも)
  吉田汀史(よしだ ていし)(1931-)

  穴子鮨買って乗り継ぐ連絡船
  池田秀水(いけだ しゅうすい)(1933-)

  朴葉鮨買ひに水着の子が来たり(朴葉鮨=ほおばずし)
  茨木和生(いばらき かずお)(1939-)

  鮎鮓へ黒き箸また朱き箸(朱き=あかき)
  長谷川 櫂(はせがわ かい)(1954-)

私も詠んでみました。

鯖鮓や篠突く雨に香の増せり(篠突く雨=しのつくあめ)
白井芳雄

今回は「すし」「鮓」「鮨」「寿司」についてのいろいろをお届けしました。

全体を通じての参考文献、出典: 吉野昇雄
               『鮓・鮨・すし−すしの事典』(旭屋出版)1990年。
                               ISBN 978-4-7511-0038-7。OCLC 23970902
                                               
                山川正光
               『絵でみるモノの数え方辞典−ことば百科』(誠文堂新光社)
                2004年10月。ISBN 978-4-416-80443-8。

                飯田龍太・稲畑汀子・金子兜太・沢木欣一監修 
                          『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』(講談社)
                ISBN978-4-06-128972-7

                          『角川俳句大歳時記 夏』
                ISBN4-04-621032-X C0392

                           白井明大・有賀一広
                          『日本の七十二候を楽しむ−旧暦のある暮らし−』(東邦出版)
                ISBN978-4-8094-1011-6 C0076             
  
           参考サイト:フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)

                故事ことわざ辞典
                (http://kotowaza-allguide.com/)

                篠田 統
               『すしの本』(柴田書店)1970年。OCLC 37797780
                               (https://www.worldcat.org/oclc/37797780)

                【全国すし商生活衛生同業組合連合会】ホームページ
                (http://sushi-all-japan.com/index.html)



最後までお読みいただきありがとうございました。
   
                   (株)技術情報センター メルマガ担当 白井芳雄

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